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大阪高等裁判所 平成5年(行コ)11号 判決

事実及び理由

第四 争点に対する判断

当裁判所も、芦屋市長が決定し固定資産課税台帳へ登録した本件土地の価格は適正な時価を超えていないと判断する。その理由は次のとおりである、当審での証拠調べの結果も右の判断を左右するものではない。

一  固定資産の評価方法について

1  固定資産税の課税標準は、当該土地の価格で土地課税台帳等に登録されたものであり(地方税法三四九条)、その価格とは、適正な時価をいうものとされている(地方税法三四一条五号)。したがって、土地の登録価格についての不服の審査は、土地の登録価格が適正な時価を超えていないかどうかについてなされるべきものである。

そして、自治大臣は、固定資産の評価の基準並びに評価の実施方法及び手続を定め(固定資産評価基準)、これを告示しなければならず、(地方税法三八八条一項)、市町村長は固定資産評価基準によって、固定資産の価格を決定しなければならない(地方税法四〇三条一項)。この固定資産評価基準(以下「評価基準」という。)は、昭和三八年一二月二五日号外自治省告示一五八号により告示されている(本件にあっては、平成二年一二月二五日号外自治省告示二〇三号による第一六次改正後のものが適用される)。

2  評価基準の定める土地の評価方法は次のとおりである。

(一)  土地の評価は、田、畑、宅地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、雑種地の地目ごとに、それぞれ別個の評価方法が定められている。土地の地目は、土地の現況によるものとされている。

(二)  宅地の評価は、各筆の宅地について評点数を付設し、当該評点数を評点一点当たりの価額を乗じて各筆の宅地の価額を求める方法によることとされている。

その評点数は、市町村の宅地の状況に応じ、主として市街地的形態を形成する地域における宅地については「市街地宅地評価法」によって、主として市街地的形態を形成するに至らない地域における宅地については「その他の宅地評価法」によって付設することとされている。そして、「市街地宅地評価法」については、市町村の宅地を商業地区、住宅地区、工業地区、観光地区等に区分し、当該各地区について、その状況が相当に相違する地区ごと(以下本件ではその状況が類似する地域を「状況類似地域」という。)に、その主要な街路に沿接する宅地のうちから標準宅地を選定し、その標準宅地について適正な時価を求め、これに基づいて当該標準宅地の沿接する主要な街路について路線価を付設し、これに比準して主要な街路以外の街路の路線価を付設し、その路線価を基礎として「画地計算法」を適用して各筆の宅地の評点数を付設するものとされている。

また、市町村長は、評価の均衡を確保するため当該市町村の各地域の標準宅地の中から一つを基準宅地として選定すべきものとされ、標準宅地の適正な時価を評定する場合には、売買実例価額のほか、この基準宅地との評価の均衡及び標準宅地相互間の評価の均衡を総合的に考慮してすべきものとされている。

(三)  なお、土地の価格を構成する要素が複雑多岐であるため、全国一律の評価基準で「適正な時価」を求めることができない場合も多いので、評価基準は、その別表第3の画地計算法の付表等を、各市町村の実情に適合するように補正することができるとしている。芦屋市は、これを受けて適正な評価が期待できるように、許容されている範囲において同市が実施する際の評価基準の補正等を定めた芦屋市土地扱要領(乙第二号証、以下「要領」といい、これと評価基準を合わせて「評価基準等」という。)を作成している。

3  評価基準は、法律の委任に基づく告示で法的拘束力を有するものと解するが相当である。また、評価基準自体、前記のとおり、標準宅地と基準宅地との間、標準宅地相互間での評価の均衡を図り、当該土地の価格を標準宅地に比準して求める等、当該市町村の土地につき、その評価が適正妥当に行われ、その土地相互間に評価の均衡を図るように定められている。

したがって、評価基準等に基づき適正にその時価が評価されておりさえすれば、他に特別の事情がない以上、その登録価格は適正な時価を超えていないものというべきである。

そこで、次項以下において、芦屋市長のした本件土地の評価が評価基準等に従い適正になされているかどうかの点について検討する。

二  本件土地の地目について

芦屋市は、本件土地を宅地として、「市街地宅地評価法」に基づき評価しているが、控訴人らは本件土地は、現況山林ないし雑種地であり宅地ではない旨主張している。

1  〔証拠略〕によれば、次の事実が認められる。

(一)  本件土地は、登記簿上の地目が宅地であり、また、当時の都市計画法にいう「第一種住居専用地域」に存在し、宅地造成等規制法三条一項による宅地造成工事規制区域に指定されている。

(二)  本件(二)及び(三)の土地は、いずれも、奥行きが間口の二倍程度もある縦長の土地である。また、本件(一)及び(四)の土地は、いずれも右(二)及び(三)の土地の周辺を囲むように接している細長い土地で、それ自体単独では何ら使い道のないような土地である。

しかし、本件土地四筆はそれぞれ殆ど高低差もなく隣接していて、これらを一体としてみると、西側道路に面してこれと間口約二五メートルで接し、約二四メートルの奥行きをもつ長方形に近い整った台形をしている。

(三)  本件土地は、後記のとおりJR芦屋駅からは一六〇〇メートル、阪急電鉄芦屋川駅からは八五〇メートル

1  〔証拠略〕によれば、次の事実が認められる。

(一)  本件土地は、登記簿上の地目が宅地であり、また、当時の都市計画法にいう「第一種住居専用地域」に存在し、宅地造成等規制法三条一項による宅地造成工事規制区域に指定されている。

(二)  本件(二)及び(三)の土地は、いずれも、奥行きが間口の二倍程度もある縦長の土地である。また、本件(一)及び(四)の土地は、いずれも右(二)及び(三)の土地の周辺を囲むように接している細長い土地で、それ自体単独では何ら使い道のないような土地である。

しかし、本件土地四筆はそれぞれ殆ど高低差もなく隣接していて、これらを一体としてみると、西側道路に面してこれと間口約二五メートルで接し、約二四メートルの奥行きをもつ長方形に近い整った台形をしている。

(三)  本件土地は、後記のとおりJR芦屋駅からは一六〇〇メートル、阪急電鉄芦屋川駅からは八五〇メートルを北側に向かい進行した地点に所在し、いわゆる交通へのアクセスは良好であって、その南側隣には本件土地に比して二分の一程度の広さ(奥行きが間口よりかなり長いもの)の土地があってその地上には現に人の住んでいる住宅があり、同住宅の向側にも舗装道路を隔てて住宅が建ち、現住者もいる状況であるほか、他にも現住住宅が並存しているところからみて右の各住宅を含む南側一帯は、明らかに市街地的形態を形成する地域となっている。

(四)  次に、本件土地の東側に芦屋市が存する。しかし、本件土地の東側には既に擁壁が設けられており、本件土地自体は全体としてみると殆ど高低差のない土地となっている。

(五)  また、本件土地の西側には、後記のとおり、幅員約四メートルの両側に草木の生えた道路があるが、右道路は、本件土地の南端よりほぼ北の部分が未舗装であるものの南の部分は前記の向かい合う住宅に面していて舗装がほどこされている。

そして、本件土地は、右道路をへだてて反対側にある崖に面している。

兵庫県においては、兵庫県建築基準条例二条により、崖地に建築物を建築する場合には、崖の表面の中心線から建築物までの間に崖の高さの一・五倍(崖の高さが二メートル以下等の場合は一倍)以上の水平距離がなければならないとされている。しかし、同条によれば、崖が岩盤若しくは擁壁等で構成されているため安全上支障がない場合又は建築物の用途若しくは構造により安全上支障がない場合には、この限りでない旨定められているのであるから、右条例との関係でみると、本件土地は、その上に建物の建築が全くできないということはできない。

(六)  本件土地の北側には人の現住する建物はなく、本件土地の北側で道路の西側の前記の崖については、過去に崖崩れが生じたことがあり、崖の上には二戸、崖の下の本件土地に面した前記未舗装道路西側で、本件土地の更に北側に進んだ部分の位置にも二戸のいずれも無住状態となったいわゆる廃屋がある。

(七)  控訴人ナザックは、昭和五八年七月、本件土地を代金一億五〇〇〇万円で購入した。平成元年八月、控訴人らは株式会社三祐商事との間で代金約二憶円で売買予約をしたが、右各取引は、本件土地を雑種地或いは山林とみたうえでの取引ではなく、明らかに宅地とみての取引であった。本件土地の南側は、前記のように住宅が建築されていて、住居となっており道路も舗装されているが、これに比すると、本件土地は、控訴人ナザックの購入以降、今日まで何の手も加えられず、放置されたままである。

以上のとおり認められる。

2  右のとおり、本件土地は兵庫県建築基準条例によりその建物の建築が規制されているものの、建物の建築が全くできないということができないものであり(控訴人は、他人所有の崖地に多額の費用を出捐してその補強工事をしなければならない旨主張するが、本件にあっては、本件土地に面する崖地の高さ、その崖地により建築が制限される範囲、その崖地の補修工事費用等の詳細についての具体的な主張も立証もない(〔証拠略〕)。したがって、本件土地を現況宅地と見得ないものといいきるわけにはいかない。かえって、本件土地の所在する位置、交通アクセスとの関係、土地周囲の状況特に南側の状況、宅地として取引されたこと等前認定の事実をも総合してみると、本件土地は、前記の購入以来、何の手も加えられず放置されたままであったことから、現在では一見宅地以外のもののような外観を呈してはいる(〔証拠略〕)ものの明らかに現況宅地とみて妨げはない。しかも主として市街地的形態を形成する地域における宅地として、「市街地宅地評価法」によって評価すべき宅地であると認めることができる。

三  本件土地の評価について

四  状況類似地域の区分、標準宅地の選定、隣地と同一の路線価を用いることについて

五  特別土地保有税の扱いとの均衡について

六  隣地の価格との均衡について

右三ないし六項に対する判断は、次のとおり訂正等するほか、原判決の五枚目表五行目の冒頭から同二一枚目裏三行目の末尾までに記載のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決五枚目表五行目冒頭の「二」を「三」に改め、同九行目の冒頭から同六枚目裏八行目の末尾までを削り、同九行目冒頭の「(三)」、同七枚目表四行目冒頭の「(四)」、同裏二行目冒頭の「(五)」、同七行目冒頭の「(六)」、同八枚目裏二行目冒頭の「(七)」をそれぞれ「(一)」、「(二)」、「(三)」、「(四)」、「(五)」に各改める。

2  同六枚目裏九行目の「状況類似地区」を「状況類似地域」に、同末行の「その」から「価格は」までを「それに沿接する主たる街路の付設する路線価は、一平方メートル当たり、」に、同七枚目表二行目の「円と決められている。」を「点(評点一点当たりの単価は一円)と決められた。」に各改める。

3  同七枚目表三行目、同裏一行目の各「証言」、同八枚目裏一行目の「号証」、同六行目の「の一、二」の次にそれぞれ「、弁論の全趣旨」を加える。

4  同八枚目裏七行目の「以上の事実を総合すると」を「以上の事実と前記二1認定事実を総合すると」に改め、同七行目の「個々の土地」から同九行目の「ものさえあるが、」までを削り、同九枚目表二行目の「これら四筆」を「全体」に改め、同一〇枚目表五行目の「その内容」から同一〇行目の「あるから、」までを削り、同末行の末尾に続けて「また、控訴人らは、評価基準等の崖地補正も適用されるべきである旨主張する。評価基準等によれば、「崖地等で通常の用途に供することができないと認定される部分を有する画地」については崖地補正をする旨定められている。しかし、本件土地それ自体に崖等があって通常使用できない部分が存するわけではなく(前認定事実から明らかである。)、右の崖地補正が本件土地に直接適用されるべきものではないし、また、前認定のとおり本件土地は必ずしも建物が建築できない土地ではないとみられること等に照らせば、右崖地補正に関する要領を本件土地に類推適用等すべき関係にあるともいえない、控訴人らの右主張も理由がない。」を加える。

5  同一〇枚目裏一行目の「原告が主張する本件土地の特殊事情」を「本件土地について考慮されるべき諸事情について」に、同一一枚目表六行目末尾の「ということができる」を削り、同七行目の冒頭から同一〇行目の末尾までを次のとおり改める。

「四 状況類似地域の区分、標準宅地の選定、隣地と同一の路線価を用いることについて

控訴人らは、芦屋市長のした本件土地の評価につき、状況類似地域の区分や標準宅地の選定に関する誤りが存在し、また、本件土地の時価は南側の隣接宅地の時価と比べて大きな開きがあるのに、同じ路線価を基準として評価されるのは不当である旨主張する。

1  控訴人らの右主張は、主として、本件土地の西側にある前認定の道路をへだててその西側に存する崖との関係で、本件土地において建物の建築が不可能なことを根拠とするものであるが、本件土地に建物を建築することが必ずしもできないわけでないことは前に認定、説示したとおりである。」

6 同一一枚目表末行の「評価基準」から「によると」までを「さらに評価基準によれば」に改め、同裏四行目の「以下」と「という。」を各削り、同一〇行目、同一二枚目表一〇行目の各「任意に」を「これを」にそれぞれ改め、同一三枚目表二行目の「仮に」から同三行目の「としても、」までを削る。

7 同一三枚目表一〇行目の「決して適切」から同末行末尾までを「一般的にいって適切でないし、芦屋市全体からしても、その行政事務量の増大を招来することは必至というべきで」に改め、同裏一行目の「ということができる」を削り、同三行目の冒頭から同四行目の末尾までを次のとおり改める。

「したがって、芦屋市長のした本件土地の評価につき、状況類似地域の区分、標準宅地の選定、また、本件土地が南側の隣接宅地と同じ路線価を基準として評価されている点に不相当なところは存しない。」

8 同一三枚目裏五行目冒頭の「四」を「五」に改め、同一四枚目表一〇行目冒頭の「しては、」の次に「住宅地等として有効に利用されているものを除き」を加え、同裏三行目の「三一条の五一」を「三一条の五第一」に改め、同一八枚目裏六行目の冒頭から同一九枚目裏七行目の末尾までを削る。

9 同一九枚目裏八行目冒頭の「五」を「六」に、同二〇枚目表三行目の「ところで、」から同五行目の「評価基準によれば、」までを「前記のとおり、評価基準では、」に、同二一枚目表七行目末尾の「い。」を「い(最高裁判所平成二年一月一八日第一小法廷判決・民集四四巻一号二五三頁)。」に各改める。

第五 結論

以上の次第で、芦屋市長が決定し固定資産課税台帳へ登録した本件土地の価格は、適切な時価を超えていないものというべきであるから、控訴人らの本訴各請求はいずれも理由がない。右と同旨の原判決は相当であって、本件各控訴は理由がない。よって、本件各控訴を棄却し、控訴費用は控訴人らの負担として、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 仙田富士夫 裁判官 竹原俊一 東畑良雄)

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